さて、前回はパルデア地方のマップ考察のために、スペインがどのような国かを見ていきました。今回はポケモンSVで重要になってきそうな歴史について見ていきたいと思います!
さて、前回のPVで明らかになったパッケージポケモン「コライドン」と「ミライドン」。その名前からもわかる通り、「コライ」と「ミライ」……「古来」と「未来」……つまりは「歴史」が重要な要素になってくるのではないでしょうか?パルデア地方のモデルとなっているスペインには歴史的建造物が多く残っていて、それらを観るため多くの観光客が毎年訪れています。しかし、その歴史的建造物の多くは複数の建築様式、そして文化が反映されていて、スペインの歴史は複雑怪奇であることがうかがえます。今回はその歴史を見ていき、パルデア地方ではどのような歴史がモデルとなっている可能性があるか、みずきのなけなしの世界史知識をもとに考察していきたいと思います!
※以下の歴史部分については、筆者が調べた内容となけなしの知識によって記載されております。間違いの指摘や詳細説明などはコメントなどでご助力いただけますと、幸いです。
スペインが世界史の教科書で最初に登場するのは先史時代じゃないでしょうか?クロマニョン人が登場した時にアンタミラ洞窟と一緒に登場していたのを覚えている人も多いのではないでしょうか?その後はしばらく、イベリア半島は教科書では登場しなくなりますが、フェニキア人が登場するあたりで再登場します。フェニキア人といえばアルファベットの元となったフェニキア文字を発明した民族で有名ですね!そんな彼らがイベリア半島南部にカディスという都市を建設し、漁業と鉱山資源の流通拠点としました。彼らがイベリア半島に来たことによって、フェニキア文字が半島に伝播していきます。その後はローマ帝国が力をつけていく時代となり、カルタゴとの間に起きたポエニ戦争を通じ、その後はローマ帝国の支配を受けるようになります。
ローマ帝国によって支配されたイベリア半島は3つの属州に分けられます。イベリア半島ではこの時代にローマ化が進んでいき、キリスト教もこの時代に伝播していきます。これもローマの平和、世界史用語の「パックス・ロマーナ」の一環です。また、属州だったこともあり、イベリア半島からは穀物を中心にローマへ輸出をしていました。この時の主な輸出品にオリーブ、そしてワインがあり、今でもこの二つはスペインを代表する生産品となっていますね!
その後はゲルマン大移動やフン族によるプレッシャーにより、西ゴート族がイベリア半島にやってきますが、南からはジブラルタル海峡を渡ってきたイスラム帝国も同時期に進出してきます。最終的にはイスラム勢力のウマイヤ朝がイベリア半島で力を付けます。しかし、ウマイヤ朝はすぐに滅亡し、その後は後ウマイヤ朝が建国され、様々なイスラム文化が発展していくのでしたが、その後ウマイヤ朝も、ほかのイスラム勢力とのいざこざで滅びます。後ウマイヤ朝が滅んだ後は小国が乱立し、さらにはイスラム勢力とカトリック勢力がイベリア半島で争うようになります。ちなみに後ウマイヤ朝が滅んだ後に乱立した小国にはバレンシア、サラゴサ、グラナダ、セビリアなど、今でもスペインの地名となっている国が建国しています。
こうして、イベリア半島ではイスラム勢力vsカトリック勢力の構図ができあがり、最終的にはカトリック勢力による国土回復運動「レコンキスタ」が始まります。カトリック勢力圏だったイベリア北部から進行し、最終的にはイスラム勢力からイベリア半島を再征服します。このように、二つの違う思想の勢力の衝突が絶え間なく行われたイベリア半島ですが、皮肉なことに、このレコンキスタを機に文化の混ざり合いが発生します。イスラム勢力はアラビア語、そしてカトリック勢力はローマ帝国の影響を深く受けたラテン語を使用していたため、この時期にアラビア語~ラテン語の翻訳が比較的に進みました。また、文化的交流によって、中世の文化を再評価されるようになり、これをルネサンスと呼びます(14世紀にイタリア中心で始まったルネサンスとは別のものです)。
後ウマイヤ朝が滅んだ後、なんやかんやあって(すみません、筆者がここら辺の歴史が曖昧でして……)スペイン・ハプスブルク朝がレコンキスタ完了後に成立し、その後はコロンブスの新大陸発見、そして大航海時代を通じて、スペインは黄金期を迎えます。スペインは世界中に植民地を作っていきます。中央アメリカや南アメリカ、同じく勢いのあったポルトガルを併合、そしてフィリピンなどにまで勢力を伸ばしたスペインの勢いは誰にも止められなくなります。このころからスペインは「スペイン帝国」として、「黄金の世紀(Siglo de Oro)」として繁栄します。ちなみにスペインの国石は鮮やかな緑色に輝くエメラルドですが、これは南米のインカ帝国を支配した際に大量にエメラルドをスペイン本土に持ち帰ったためです。実は血なまぐさい背景があったりします……。
そんなスペイン帝国ですが、16世紀にはいると台頭してきたイギリスによって黄金時代はあっけなく終了します。植民地のほとんどはなくなり、さらにはフランスの介入、イギリスへのジブラルタル割譲など、話し始めれば記事が何本もかけるくらいの分量となるので、割愛します。本当は大航海時代について、もっと書きたいのですが、ここはぐっと我慢します……。
そして時は過ぎ近代、半島戦争、第一次世界大戦によるインフレーション、クーデター、そして独裁政権、スペイン内戦と第二次世界大戦、そしてさらなる独裁を経て、現在のスペインが存在します。ここも長くなってしまいそうなので、申し訳ございませんが割愛いたします……。スペイン内戦と第二次世界大戦部分などはもっと語りたいぜ……。
ここで少し補足です。スペイン内戦時期の芸術家たちは、第一次世界大戦から続く暗い雰囲気を反映した作品が多いです。以前記事で紹介したゲーム「Arruyo」でもモデルとなったフランシスコ・デ・ゴヤの作品なども、この時期に描かれたものは人間のえぐい一面などを多く描いています。それにしても、なぜスペインはゴヤなど、天才的芸術家が多いんでしょうね?どこに行っても美術館があるくらいの美術大国スペイン、いつ行っても魅了されてしまう国です。
と、いうわけで今回はパルデア地方のモデルとなったスペインの歴史について見ていきました。こう振り返ると支配に次ぐ支配、そして更なる支配の後に迎えた黄金期の後の混乱、なかなか波乱な歴史ですね。
そんなスペインの現在は比較的に安定していますが、内側で様々な問題を抱えており、なおかつ経済的にも少し厳しい状態が続いています。先日の記事で触れたカタルーニャ独立運動、政治の不安定さ、そして経済成長を続けているにもかかわらず続く赤字など、国内には様々な問題が残っています。
戦乱の中に「自由と繁栄」を求めた過去、そしてその戦乱の後に「富と安定」を求める現在、この構図がスペインの過去と現在を表していると思われます。そしてこの構図こそが、この記事の最初に触れた本作のテーマであろう「コライ」と「ミライ」につながるのではないでしょうか?次回はこの「コライ」と「ミライ」という点で、スペインの地理的考察を進めていきたいと思います。
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